「人間通」
著者:谷沢永一、発行所:新潮社
「人と人」「組織と人」「言葉と人」「本と人」「国家と人」という章立てで、96のテーマで人間とはどういうものかを本音で語ってくれている。
そのため、本書で語られている人間の一面というのは現実世界では人々が口に出して言及することはないが、建前やきれい事を抜きにして、周囲の人を思い浮かべたり、自分の行いや考えを思い浮かべると首肯できる内容ばかりだった。
それを強く感じた一例をあげる。「自己紹介」という項目での「我が国における人間評価の決定的な基準は出身校の等級(グレード)である。(中略)一般の社会組織に属する限り出身校の如何は生涯を通じて受ける評価を不動にする」
世間では「学歴社会の終焉」や「学歴と仕事の能力は関係ない」といった論調が大きくなってきていると思う。しかし、社会に出ると学歴というものは否応なく付いてくる。社会への入り口として大半の学生が経験する就職活動、入社後の昇進という組織内での評価はもちろんのこと、例えば、殺人事件の犯人が高学歴だと「エリート〇〇」という肩書でメディアから注目されたりする。やはり、人間とは本音では学歴に価値があると考えているという事だろう。
今まで書いてきた内容を読まれると、本書を読むと世の中は世知辛く、人間関係に希望を持てなくなるのでは、と思われた方もいるかもしれない。そこで、もう一つ私の琴線に触れた項目を紹介する。
「悪口」という項目での「或る種の作家や評論家は誰をも絶対に貶さず、褒めて褒めて褒めまくる寛容を貫いた。その結果として読者は彼らの言説を額面通りに受け取らなくなる。どこまで本気かしら、と眉に唾をつける」
例えば、誰にでも優しく接し、他人の悪口を絶対言わない人がいたとする。その人は周囲の皆から聖人君子のように尊敬されるかというと、そんなことはなく、「あの人は八方美人だ」とか悪く言われたりする。
かと言って時々、他人の悪口を言うと、その部分だけを見て「あの人は他人の悪口を言っていたから信用できない」と言われている。
要するに他人が自分のことをどう思うかはコントロールできない事なのだから気にせずに自分が思う通りに振舞うのがストレスを溜めることなく、過ごす秘訣だ思う。かと言って、他人に対して腹が立つからと言って暴言を浴びせるなど、他人を傷つける行動を慎むべきだと思うが。
今日は以上です。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
こうじ